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ハッピーリッチコラム バックナンバー

『土地の相続登記、義務化へ さて私たちはどうすればいい?』
    ~すべての人は準備を、行政は覚悟を、不動産事業者はプロのサービスを~
2019/02/19

私的年金をつくろう 『ハッピーリッチ・アカデミー』第312号

こんにちは!
明るく前向きに自分の財産を築いていこうと頑張るみなさんに、ハッピーな人生を送るための情報を提供する「ハッピーリッチ・アカデミー」管理人の川瀬です。

今回は、相続と不動産についてです。誰もが無関心ではいられないテーマですよ。

 
■相続登記ようやく義務化へ

今の若い方にとっては考えられないことかもしれませんが、「土地は持っているだけで確実に値上がりする資産」と認識されている時代がありました。1990年代初め頃までの話です。
その後のバブルの崩壊以降の土地価格の下落で、土地を保有することの手間や固定資産税なども考えると「土地は資産というよりも負債かも・・・」と意識が変化していきました。

その影響なのでしょうか、相続で親世代から受け継いだ土地を登記しない人が増えています。
国土交通省によると、なんと九州の面積よりも広いおよそ410万ヘクタールもの土地が登記簿上の所有者が不明の状態だそうです。このままでいくと2040年には所有者不明の土地が720万ヘクタール近くになり、ほぼ北海道の面積くらいになるのではないかと懸念されています。

この状況に歯止めをかけるため、ようやく政府も動き出しました。
これから大相続時代を迎えるにあたって、行政も事業者も、そして「相続なんて関係ない」と思っているような人も、すべての人がしっかりと準備し対応することが求められるようになりますね。

<土地の相続登記を義務化 所有者不明問題で法改正へ >
(2019年2月8日付 日本経済新聞)
『法務省は8日、所有者不明の土地が増えている問題を解消するため、民法と不動産登記法を見直すと発表した。相続登記の義務化や所有権の放棄を認める制度の創設、遺産分割の話し合いができる期間の制限などが柱となる。山下貴司法相が14日の法制審議会(法相の諮問機関)総会で諮問する。2020年の臨時国会に改正案を提出したい考えだ。』

2020年以降、相続登記が義務になります。
これはとても良いことだと思います。「ようやく進みましたね」という感じです。

 
■相続登記が進まない理由とその後に発生する問題とは?

今、相続した土地の名義書き換えの登記は任意です。義務ではないので登記をしなくてもなんら罰則はありません。

相続にともなう登記って書類を揃えるだけでもとても大変だし、司法書士などの専門家に頼むと当然費用もかかります。なんとなく面倒になってそのまま放置というケースが多いのかもしれません。また相続人の間で「誰が、どれくらい相続するのか」ということの折り合いがつかず、もめているから登記が出来ないというケースもあります。

相続人が相続した土地の名義を書き換えずに放置されたまま、また次の相続が起きたりすると法定相続人の数がどんどん増えて、そのうち誰が所有権を持っているのかわからなくなります。

所有者がわからないと売買や賃貸などの取引が出来なくなります。
私は宅建士の業務もしていますが、こういうケースはよくあります。例えば、父親も母親も亡くなって、「遠方にある実家が空き家になったので売却したい」と依頼を受けて登記情報を調べてみると、自宅の名義は父親の父親、つまり祖父のまま。売却には所有者全員の同意が必要ですが、祖父の土地の法定相続人は父親の兄弟(つまり、おじさんたち)です。もしすでにおじさん達も亡くなっていると、おじさん達が相続していたその土地の所有権はその子供(つまり、いとこたち)に移っていて、結局その土地の所有者は全員で10人以上になった、というようなケースです。売却にはその10人以上の相続人全員のハンコが必要ですが、いとこの一人でも消息不明の人がいるともうその土地はすぐには動かせなくなります。家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申し立てをするなど、もう大変な手間と時間と費用がかかることになります。

所有者不明の土地は地域にも影響を与えます。
所有者不明の土地があると地域の再開発や災害復旧などが進みません。固定資産税の徴収もままならなくなります。
国土交通省の試算によると、空き家や空き地のまま放置されて、塩漬けになっている不動産があることによる経済的損失は約6兆円にものぼるとされています。

だから「相続登記の義務化」という話になるわけです。これまで登記を任意のままにしていたこと自体がおかしかったわけですが。

 
■法改正のポイントは?

法改正に向けて検討されている主なポイントは次の4点です。

(1)相続登記の義務化
(2)所有権放棄の制度を創設
(3)遺産分割協議に期限
(4)相続財産管理人を土地ごとに選任

まず相続時の登記を義務化します。登記しなければ罰金などを科すことも検討しています。土地の所有権の放棄も認めるようにします。そしてズルズルと後回しにならないように期限も決めます。そして、相続人全員が相続放棄した場合とか相続人がいない場合であっても土地が塩漬けにならないように相続財産管理人の選任もできるようにします。

この中でも、「所有権放棄」ができるようになるのはなかなか大きい改正だと思います。
現行法下では土地所有権だけの放棄は認めていません。しかし、現実にはすべての土地を誰かに引き継がせることが難しくなってきています。都心にあって売ったり貸したりできるような土地ならまだいいですが、田舎で資産価値もほぼなく、売ることも貸すこともできないような土地を相続しろと言われても、現実にはとても困ります。
例えば、少子化、晩婚化で子供がいない人、生涯独身の人などが増えていますが、その場合で法定相続人が兄弟姉妹になった時、その兄弟姉妹も亡くなっている場合には「代襲相続」といって、その兄弟姉妹の子たちが相続することになります。つまり、甥や姪ですね。
相続する甥や姪の立場からみると、子がいなかった遠い親戚のおじさんやおばさんが持っていた資産価値のない田舎の土地を「あなたが相続しなさい」と突然連絡が来るわけです。
そもそも管理もできないし、負債になるような不動産を押し付けられても困りますよね。

どのような条件で放棄を認めるか、どこが受け皿になるのか、手続きをどうするかというようなことは今後の検討テーマということですが、注目していきたいと思います。

 
■今後、すべての人、行政、不動産事業が向き合うべきこととは?

しかし、登記を義務化しても、これから相続が起きる土地はいいですが、既にある所有者不明の土地をどう解消してくかなど問題はまだまだあります。今の、非常に時間と手間がかかる登記手続きをどう簡素化するかも大事なテーマです。

ただ、一歩前進することは間違いありません。
これからはすべての人が相続に備えて事前準備をすることが当たり前になるでしょう。

相続登記は相続税がかかる人たちは皆やっているわけですが、問題はおよそ92%を占める相続税がかからない人たちです。相続資産が基礎控除の範囲内の人たちは「ウチは財産が少ないから相続対策は必要ない」として、被相続人が元気なうちに話し合うことや遺言などの準備をしない人が多いのです。相続税の納税手続きが無いから不動産の相続登記もしない、という人が少なくないのですが、これからはそういうわけにはいきません。誰がその土地を受け継ぐのか、手続き上必要な書類はどんなものがあるのか、など準備しておくことが大事になります。

そして、地方自治体などの行政は覚悟が必要になります。
売れない、貸せない、活用もされないような土地をはじめとして、引継ぐ人がいない土地が増える可能性が高まるわけです。土地の所有権放棄や寄付の要望は増えるでしょう。土地の寄付などは管理負担が重いので嫌がる自治体が多いのですが、そもそも所有者不明の土地だって地域のコスト増に直結しています。ここは覚悟を決めて土地の売買や利活用が円滑に進むような仕組みづくりを進めるしかありません。

そこでは、宅建事業者など不動産のプロが果たすべき役割も大きくなるでしょう。
地域の不動産のプロとして、地域にある土地がちゃんと承継されるように、そして地域の不動産価値を下げる空き家や取引できない土地をこれ以上増やさないためにも、行政とも連携してしっかり事前準備や事後対応のサポートをすべきです。これをひとつのビジネスチャンスと捉えて動いてもらいたいものですね。

今回は以上です。次回もお楽しみに。

 
【編集後記】 「病気に立ち向かう勇気」
競泳の池江璃花子選手が白血病であることを公表されました。夢に向かってひたむきに努力していた若い彼女の心の内を思うと本当に胸が痛みます。必ず病魔に打ち勝って戻ってきてほしい。病気に立ち向かう勇気を心から応援しています。