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ハッピーリッチコラム バックナンバー

『今の日本で物価を上げ景気を安定させることは可能なのか?』
    ~求められているのは経営者の意思決定~
2019/02/05

私的年金をつくろう 『ハッピーリッチ・アカデミー』第311号

こんにちは!
明るく前向きに自分の財産を築いていこうと頑張るみなさんに、ハッピーな人生を送るための情報を提供する「ハッピーリッチ・アカデミー」管理人の川瀬です。

今回は物価と景気についてです。
さて、今の日本で景気を安定させるために大事なことはなんでしょうね。

 
■物価2%はさらに遠のく

日銀は景気安定の指標として「インフレ率2%」を掲げていますよね。
なかなか実感はないですが、実は今は景気拡大期です。それでも2%はかなり実現が難しそうです。

<さらに遠のく物価2% 日銀、見通し3回連続下げ>
(2019年1月24日付 日本経済新聞)
『日銀の2%物価目標がさらに遠のきそうだ。日銀は23日、3カ月に一度見直す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、2019年度の物価見通しを3回連続で引き下げて0.9%に下方修正した。大規模な緩和策は長期化が避けられず、金融機関の収益低下といった副作用への目配りが欠かせなくなる。』

日銀の黒田総裁は2013年の就任以来、「デフレの責任は日銀にある」として、安倍政権と歩調を合わせて「デフレ脱却」を目指し、「物価の2%上昇」を目標として掲げました。

これはいわゆる「インフレターゲット」と言って、「2%インフレを目指す」と政府・日銀が宣言して、金融緩和などその実現のための方策を取ることで、世の中の人に「ああ、これから物価は上がるんだ」と思ってもらって消費行動を促すという狙いがあります。

 
■インフレターゲット、機能せず

しかし、現実には物価は2%も上がっていません。

黒田総裁がインフレターゲット2%を掲げた2013年からのインフレ率(前年対比のコアCPI)は以下の通りです。

18年+0.8 17年+0.5 16年-0.3 15年+0.1 14年+2.6 13年+0.4
(「コアCPI」:消費者物価指数(CPI)から天候によって価格変動が大きい生鮮食品を除いたもの)

黒田総裁就任前の2012年は-0.1%でしたので、確かに2013年以降プラスには転じましたが、2%を超えたのは消費増税があった2014年だけ。それも、翌2015年~2016年にはその反動減で物価は落ち込んでいます。

安定的な2%上昇には程遠い状況ですね。

2019年度も、「原油価格が下がっている」とか「携帯通信料が下がる見通し」とか物価が上がらない要因をあげて、「だから2%の達成は難しい」と発表されたわけです。

もはや市場では日銀の2%目標が実現できるとほぼ誰も信じていない状態になっています。世間のインフレ期待を高める「インフレターゲット」はもうその機能を失ってしまっていると言わざるを得ないですね。

 
■そもそも今の日本の経済環境で物価は上がるのか?

インフレターゲット論を推奨している一人である経済学者のポール・クルーグマン教授はこう言っています。
「金融緩和だけではインフレにはならない。インフレになるのは、高い需要を生み出したとき。好況になって経済が過熱したときのみである。」(「さっさと不況を終わらせろ」より)

基本的に、健全な物価上昇(インフレ)とは、世の中の需要が高まって消費が増えた時に、その需要が製品の供給力を上回るときに起きるとされています。

しかし、今の日本で供給力を上回るほどの需要が生まれる可能性があるものって何があるでしょう?

車や家電などの工業製品は生産性が高いので需要に供給が追い付かないなんてことはほぼないでしょう。もはや工場は自働ロボット化し、また生産拠点はグローバル化しています。どれだけ需要が高まっても、世界中からいくらでも安いモノが入ってきます。その需要増の恩恵を受けるのは海外の企業であり、ロボットです。国内の労働者の賃金が上がることはありません。

ましてや日本は人口減少の真っただ中であり、高齢化が進み、内需は落ち込むばかりです。
新興国・途上国にあふれる過剰な供給能力と国内の絶望的なまでの需要不足。これが今の日本を取り巻く経済環境です。好景気でインフレになる要素はどこにもないのではないか、とも思わされますよね。

では、2%のインフレが達成できない日本はもうダメなのでしょうか。
もともと、なぜ「2%程度のマイルドなインフレ(緩やかな物価上昇)」がよくて、「デフレ(持続的な物価下落)」はダメなのか、というと、デフレが続くと、実質賃金が目減りして、消費が落ち込む、企業が生産を落とす、労働者の賃金が下がる、消費がさらに落ち込む、という「負のデフレスパイラル」に陥り、GDPを減らし、国力を落とすからですよね。

だから、大事なのは、賃金が上がることであり、GDPの約6割を占める消費が落ち込まないことですね。

今は非常に緩やかではありますが、GDPは拡大していて、ずっと景気は拡大しています。あの「いざなぎ景気」(65年11月~70年7月:57か月)や「バブル景気」(86年12月~91年2月:51か月)を抜いて、6年2か月(12年12月~現在)もの戦後最長の景気拡大局面にあります。

それでも「実感なき拡大」と言われているのは、その成長率がたったの年率1.2%だからです。その主因は消費が伸びないこと。なぜ消費が伸びないかというと国民の可処分所得が上がっていないから。人数が増え続けている高齢者の年金は増えないし、人数が減りつづけている生産年齢人口の現役世代の賃金がさほど上がっていないからですね。

 
■キーワードは「サービス業の値上げ」

お金も余り、生産設備も余っています。今、日本で唯一不足しているのは働き手です。自動化されている工業製品は生産力が余っていて値上がりはしないとしても、人手が必要なサービス業では今人手が足りずサービスが提供しにくくなっています。

失業率は2%台で、完全雇用状態が続いています。高齢者も主婦も働きに出始めています。
サービス業では供給力が不足しているのです。ようやく本格的な賃上げの機会ですね。これは、これまで「生産性が低い」と酷評されてきた日本のサービス業が生産性を上げるチャンスです。飲食業や小売業の店員、配送業者や建設作業員など、皆、賃上げのタイミングが来ているのです。

企業側はこれを負担と考えず、好機としないといけないと思います。
賃上げして良い人材を確保し、より良いサービスを提供して付加価値を上げ、それを価格に乗せればよいのです。
「値上げ」ですね。

「値上げなんかしたら顧客が離れて生きていけなくなる」という企業は確かに少なくありません。でも値上げして顧客が離れるということはそれだけの付加価値を提供できていないと考えた方がいいでしょう。商品・サービス力を高めて、経営改善をして、値上げを売り上げ増の機会にするべきです。

厳しい言い方をすると、適正な値上げが出来ないから安い労働者を探すというのは自社のサービスの付加価値の低さを労働者にツケ回しているだけです。そういう競争力のない企業が本当に良いサービスを提供している企業の付加価値を落とすのです。

労働人口が漸減していく日本では生産性の向上が不可欠です。つまり、低生産性の労働力を高生産性分野にさせることが急務なのです。だから、時勢に見合った賃上げと提供サービスの値上げが出来ない企業は、残念ではありますが市場から退出していただかないといけない、と思うのです。

現実的に「人手不足倒産」は増加しています。賃上げしたら経営が厳しくなると考えている企業は良い人材を確保できないのでいずれ経営が立ちいかなくなるでしょう。

安い賃金でも働いてくれる存在として外国人を連れてきて、低生産性の企業の存続をはかっている場合ではないのです。

賃金が上がって可処分所得が増えれば消費は増えます。景気はさらに安定するでしょう。求められているのはサービス業の経営者の生産性向上に向けた意思決定です。

キーワードは「サービス業の値上げ」ですね。

今回は以上です。

 
【編集後記】 「ホテルも値上げ」
今、供給力が限定されていて値段が上がっている代表例がホテルなどの宿泊施設ですね。インバウンドのお陰でしょう。これもサービス業です。
日本の就労者のおよそ7割がサービス業に従事しています。サービス業の賃上げと値上げ、大事ですね。