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ハッピーリッチコラム バックナンバー

『銀行審査はAIとって代わられる業務なのか?』
    ~りそな銀行の取り組みが興味深い理由とは?~
2018/11/27

私的年金をつくろう 『ハッピーリッチ・アカデミー』第306号

こんにちは!
明るく前向きに自分の財産を築いていこうと頑張るみなさんに、ハッピーな人生を送るための情報を提供する「ハッピーリッチ・アカデミー」管理人の川瀬です。

 
■りそな銀行、業績改善で金利引き下げ

企業経営者にとって、経営に必要な運転資金や設備資金を機動的かつ適切な金利水準で用立ててくれる銀行の存在はとても重要です。ただ、経営者と同じ目線で事業を考えてくれる銀行はなかなかいないのが現実。銀行との付き合いを「難しい」と感じている経営者は少なくないと思います。

そういう意味では、銀行が、どこの何を、どう見て、どう判断しているのかということがはっきりしているのは経営者側にとっては安心できることです。

下記記事にある「りそな銀行」の取り組みは銀行の取引先への姿勢を明らかにするという意味で好ましいと思います。

<りそな、業績改善なら金利下げ 中小向けローンで>
(2018年11月21日付日本経済新聞)
『りそな銀行は中小企業の業績が上向けば、契約中の貸出金利を自動的に引き下げるローン商品の取り扱いを始めた。改善する見込みのある企業にコンサルティングを実施し、解決すべき課題などを企業と共有する。一時的に業績が落ち込んだ企業はこれまで貸し付けが難しかったが、再成長を促すきっかけをつくり融資機会を広げる。』

通常、貸出金利はその企業の信用状態に応じて決まります。
決算書をもとに取引先企業の信用状態の「格付け」を行い、信用度が高い企業には優遇金利を適用します。逆に信用度が低い企業には相応に適用金利を上げていきます。

リスクに応じて適用金利を変えるのは当然だと思われますよね。
では、この取り組みの何か面白いのでしょう?

 
■りそな銀行の取り組みの興味深いところ

この記事を見て、私が「このりそな銀行の取り組みは面白いな」と思ったところは次の3点です。

ひとつは、業績改善したら「自動的に」金利を引き下げるというところ。
銀行にとって貸出金利を下げるというのは「もうけ」を減らすことになります。だから、銀行側から積極的に「金利を引き下げましょう」などと言ってくることはあまりありません。企業の方から申し出て、それに応じて銀行が審査をするのが普通です。
それをりそな銀行は「自動的に」引き下げるのです。銀行と金利の交渉をするのは企業にとっては億劫なことです。無駄な金利交渉をすることなく、最初に合意しておいた水準を達成したら自動的に引き下げるというのは合理的です。

ふたつめは、その業績改善の目安を明確にしているところ。
記事には、『純有利子負債をEBITDA(利払い・償却・税前利益)で割った値を、新規融資の直近の決算期と融資後の決算期で比較し、改善すれば金利を下げる。』とあります。
つまり、企業の稼ぐ力が増えたかどうか、もしくは借入を減らすことができたか、というところをみますということですね。「業績向上」という目安は企業側にはわかりやすい目標だと思います。

3点目は、対象先を明確にして、その事業計画策定に銀行員がかかわるところ。
実は、これがこの取り組みの狙うところであり、私が一番のポイントだと思うところです。

 
■銀行員が企業経営に深く関与する意義

銀行の「総合利ざや率」は下がっています。
「総合利ざや率」とは、「貸出利回り‐預金・債権等原価率」のことです。つまり、総合利ざや率は銀行の本業のもうけの源泉なのですが、この総合利ざや率は年々下がってきていて、全国銀行協会の資料によると平成29年度の銀行業界全体の総合利ざや率の平均は0.22%です。

そんな中、「儲けの源泉である貸出金利をタイムリーに下げていたら銀行は損をする」と考えるのは早計だと思います。

この取り組みの本質的な意義は、「メイン先もしくは将来のメイン候補先となる優良取引先の囲い込み」だと思います。

りそな銀行は、この取り組みの対象を、『既存の融資の利ざや収益や振込手数料など、りそなの業務粗利益率が0.6%以上ある企業』としています。

つまり、その企業から得られている総合収益が平均利ざや率を上回るレベルにある企業、いわゆる「お得意先」が対象ということです。
そして、そういうお得意先に対して、

『コンサルティングを実施し、解決すべき課題などを企業と共有する。(中略)融資する際には事業環境や強みと弱み、新商品の開発や販売力の強化といった解決すべき課題と提供できるソリューションをまとめた課題共有シートをつくり、改善度合いを相互に確認する。』(日経記事より)

つまり、銀行員がその重要取引先の経営計画を経営者と一緒に立てるわけですね。
これはとても良いことだと思います。

通常、銀行は企業の決算書の数字から機械的に審査された「格付け」を基に融資や金利設定を行っています。そこには事業環境に対する深い洞察や企業の扱う商材・サービスの強みや将来性などへの評価はあまり反映されません。
これまでの銀行員は、「客観性を重視する」という名目で、企業の経営に深く関与することをあえて避けてきた側面がありました。しかし、ある意味、取引先企業の経営の責任の一端を担っている以上、金融マンとしてその事業の専門家でもあるべきです。

金融庁からも、これまでの画一的な審査姿勢を改めて、もっと取引先の事業性評価を重視するよう求められるようになっています。

銀行がその企業の事業を深く理解するようになるほど、相応のリスクも取れるようになるはずです。業界を知り、その企業の強みを知れば、与信判断のレベルは絶対に上がっていきます。結果として貸し倒れも少なくなっていくと思います。

 
■銀行の審査業務はAIにとって代わられる仕事?

銀行審査はいずれAI(人工知能)によってとって変わられる業務とよく言われます。
しかし、AIが得意なのはデータの分析です。銀行審査には、データ分析だけではなく、人の経験と知識や洞察力もとても大事です。

ましてや、りそな銀行は中小企業を主な顧客としている銀行です。中小企業の経営はほとんど経営者の資質で決まります。経営者の事業環境に対する戦略、そこへ立ち向かう強い意思と行動力、銀行としては、それらに対する総合的な判断が最も大事なのです。
そこはまだまだAIには判断できない部分ではないでしょうか。そして、そこを見抜く力を組織的に磨いていくことこそが中小企業向け金融機関の生き残る道であるという、りそな銀行の決意をこの記事に見た思いです。
大いに期待しています。

今回は以上です。
次回もお楽しみに。

 
【編集後記】 「りそな、いいね!」
りそな銀行は私の出身銀行(元大和銀行)ですので特別な思い入れがあります。私は今から約20年前、「もっと深く企業経営に関わりたい」と思い、銀行からコンサルティング業界へ転職しました。だから、今日のテーマのような金融機関の融資審査姿勢の変化には感慨深いものがありますね。勝手に応援いたしております、りそな銀行。