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ハッピーリッチコラム バックナンバー

第297号『業務改善命令を受けた東日本銀行、「歩積み両建て」とはなにか?』
    苦境にある地銀、早々にビジネスモデルの転換を~
2018/07/17

私的年金をつくろう 『ハッピーリッチ・アカデミー』第297号

こんにちは!
明るく前向きに自分の財産を築いていこうと頑張るみなさんに、ハッピーな人生を送るための情報を提供する「ハッピーリッチ・アカデミー」管理人の川瀬です

 
■昭和の手法「歩積み両建て」とは?

地方銀行の経営が厳しいといわれて久しいですね。
そんな中、「歩積み両建て」という文字に目が留まり、「ダメだ、こりゃ」と思ったニュースがこちらです。

<東日本銀に改善命令 不適切融資で金融庁>
(2018年7月14日付 日本経済新聞)
『金融庁は13日、顧客に負担を強いる不適切な融資を繰り返していたとして、コンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)傘下の東日本銀行に対して業務改善命令を出した。
必要以上の資金を貸して一部を同行に定期預金させたり、名目がはっきりしない手数料を取ったりしていた。経営責任の明確化や内部管理体制の抜本的な強化などを求める。』

記事の中にある、『必要以上の資金を貸して一部を同行に定期預金させる』という手法のことを「歩積み(ぶづみ)両建て」といいます。

例えば、借り手である企業が「5,000万円の融資」をお願いしたときに、銀行が、「1億円融資するので、残りの5,000万円は預金で積んでおいてください」とします。この5,000万円の預金はずっと置いておかなければならないとされ、実際に使うことはできません。預金と融資を貸借対照表でいうところの右と左の両建てで積み増すことから「歩積み両建て」といいます。

これは銀行が強い立場を使って、強制的に借り手企業に不公平な取引を押し付けている「優位的地位の濫用」に当たることから行ってはならないというお達しが金融庁や業界団体である全国銀行協会からもう昭和の頃から出ています。
平成になってからの元銀行員である私にとっては、「えっ、今でも歩積みやっている銀行ってあるの?」というくらいの驚きでした。

 
■なぜ「歩積み両建て」は不公正取引なのか?

「歩積み両建て」がなぜ不公平な取引になるかというと、実質的な借り入れ金利が見た目の金利よりもはるかに上昇してしまうからです。
表面上は低金利で貸し出しているようにみえても、実質は高金利となっていて借り手企業の負担が大きくなるからです

例えば、1億円を金利3%で借りて、5000万円を預金させられるとします。預金の金利はわかりやすくゼロとしましょう。
すると、年間の借り入れ利息の支払いは、1億円×3%で300万円ですね。
しかし企業が借りているのは本当は5,000万円なのです。5,000万円に対して年間300万円の利息を支払っているということは本当の金利は、300万円÷5,000万円で6%ということになりますね。
3%で貸すといっておいて、実質的な金利負担は6%なわけです。

この「歩積み両建て」は、銀行が実質金利を上げてもうけるため、という目的のほかに銀行(もしくは支店)のランクを上げるためというものもあります。

銀行は資金量、融資量という「規模」でランク付けられ評価されます。
資金量は多い方がいいとされていて、銀行の支店も担当者も「いくら融資と預金を増やしたか」ということが評価の対象になります。

「歩積み両建て」をやると、銀行のバランスシート(貸借対照表)は、単に5,000万円を融資するときよりも、貸借ともに大きくなります。

<銀行のバランスシート> ※預金と貸金が普通の企業の逆になります
1)単に5,000万円を融資したとき

(借)資産 (貸)負債
貸付金 5,000万円 調達 5,000万円
資産・負債計 5,000万円

2)1億円融資して、5,000万円を歩積みさせたとき

(借)資産 (貸)負債
貸付金 1億円 顧客預金 5,000万円
資産・負債計 1億円 調達 5,000万円

銀行員は、融資をしたらそのお金を預金で回収する、ということは普通にやります。
例えば、在庫の仕入資金を融資したら、それが売上になった時の売掛金の入金は他行ではなく、自行口座にしてもらうとか、賞与資金を融資したら、社員のボーナスをできるだけ定期預金にしてもらうとかです。こういうことを資金還流管理といいますが、これは普通に銀行員の常識としてやります。
こういうことをこまめにやらない、もしくは銀行の力が弱くて、回収金を他行に取られてしまうような銀行が安易に歩積みをするのでしょうね。

 
■東日本銀行に過度なプレッシャーはなかったか

私が銀行に入った頃(平成2年)にはもうとっくに歩積み両建は禁止されていました。だから「歩積み両建て」は「昭和の手法」と言われるのです。
しかし、銀行本部からの厳しい業績アップのノルマを達成するために、簡単に収益が上げられて融資と預金の額を伸ばすことができる歩積み両建てに手を染めてしまった支店があった、というようなことは耳にしたことはありました。

歩積み両建ては銀行の内部監査で簡単にわかります。
今回の東日本銀行のケースでは、『不正をチェックするための監査部も、形式的な点検や手続き面の監査に終始し、こうした不適切な融資を見過ごしていた。』(同記事)といいますから、これはもう組織ぐるみと言われてもしょうがありません。
歩積み両建ての他にも公的制度融資の実行の際に本来取ってはいけない融資手数料を取ったり、架空の事務所に貸し付けをしたりしていたことも明らかになっています。
やっていることが滅茶苦茶な上に、やっている手法が古いというなんともトホホな事件でした。

今回、業務改善命令を出した金融庁は、「この背景には東日本銀行が横浜銀行との経営統合があった」とみています。
地銀最大手の横浜銀行と東日本銀行では規模も収益力も圧倒的な差があります。少しでも東日本銀行の存在感を高めようと営業現場に過度なノルマやプレッシャーがかかっていたのでしょうね。

 
■苦境にある地銀、早々にビジネスモデルの転換を

もっと言うと、そもそもの背景には地方銀行全体の苦境があります。
地方経済は衰退し続けています。地域住民は高齢化し、企業は元気がありません。
貸出先はなく、銀行の儲けとなる利ざやは限りなく薄い。余っている預金を細々と低金利の国債で運用してきましたが、マイナス金利導入以降はそれもできなくなりました。

日本経済新聞によると、「2018年3月期の上場地銀80行・グループは6割が最終減益で、うち6行は本業が赤字だった。」とのこと。東日本銀行も本業のもうけを示す業務純益が2012年3月期は159億円あったのが、2018年3月期には88億円と4割以上も減りました。

だからといって不正をしていいわけではないのは当然です。
古ぼけた価値観の中で経営をしている暇があったら、さっさと規模を縮小し、必要に応じて統廃合して経営を効率化する必要があります。その上でシステム投資をしてネットバンク機能を強化し、フィンテック企業との連携を進めた方がいいでしょう。

いずれ世の中はこうなるのです。

<着々と進む「アマゾン銀行」誕生への布石 >
(2018年7月9日付 日本経済新聞)
『アマゾンがさらなる「経済圏」の拡大に向けて着々と強化を進めているのが金融分野だ。近い将来に「アマゾン銀行」が金融業界を揺るがす可能性は否定できない。』

世の中の金融仲介機能はこれまでの「銀行」という業態から、グローバルな「ITプラットフォーマー」にとってかわられようとしています。そんな中で30年以上前の不公正な手法が今も日本の銀行で行われているというニュースに暗然とした次第です。

今回は以上です。
次回もお楽しみに。

 
【編集後記】 「西日本豪雨」
西日本豪雨は200人を超す死者を出すという大災害になってしまいました。被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。自然災害の脅威におののいています。被災地の一日も早い復興を願うとともに、もう二度とこのような災害が起こらないことを祈るばかりです。