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ハッピーリッチコラム バックナンバー

第281号『ドラマ「陸王」にみる企業の成長戦略とは?』
    なぜ、埼玉中央銀行はあんなに「こはぜ屋」に厳しいのか?~
2017/11/28

私的年金をつくろう 『ハッピーリッチ・アカデミー』第281号

こんにちは!
明るく前向きに自分の財産を築いていこうと頑張るみなさんに、ハッピーな人生を送るための情報を提供する「ハッピーリッチ・アカデミー」管理人の川瀬です。

 
■日曜劇場「陸王」、面白いです。

TBSの日曜劇場「陸王」、盛り上がっていますね。
「陸王」を開発している宮沢社長の熱意とそれに動かされる人たちの心意気には感動します。そしてわかりやすい「悪者」がいるのもストーリーを明快にしています。
中でも私は元銀行員だった視点から、「悪者」として出てくる埼玉中央銀行の支店長と新担当大橋君のやり取りを興味深く見ています。私から見ると、大橋君はなかなか優秀だなと思います。

その理由を説明する前に、観ておられない方のために簡単にかいつまんであらすじを。

足袋(たび)を製造している「こはぜ屋」は、足袋の需要減退に苦しんでいました。そんな時、社長の宮沢は、メインバンクの埼玉中央銀行の担当者坂本君から「新規事業に取り組んだらどうか」という提案を受けます。そうした中で、宮沢社長が考えたのが足袋の製造技術を活かした本格的ランニングシューズの開発でした。
そうして生まれたランニングシューズ「陸王」は、はだし感覚で人間本来の足の運びが実現できることを売りにしようとしますが、耐久性や履き心地など改善点は山積み。そこに嫌なライバル企業や厳しい銀行の支店長などが「こはぜ屋」の前に大きなハードルとして立ちはだかります。

私は原作を読んでいましたので、あらすじは知っていますが、これがドラマになるとまた迫力が違いますね。

 
■なぜ埼玉中央銀行はあんなに厳しいのか?

さて、埼玉中央銀行です。「こはぜ屋」の担当の坂本君は担当企業への愛情にあふれた熱血漢です。しかし、「こはぜ屋」の宮沢社長に新規事業を勧め、ランニングシューズ開発にまで積極的にかかわろうとする姿勢は支店長から叱責を受け、最終的には担当を外されてしまいます。
後任の大橋君は、支店長同様、「こはぜ屋」の新規事業には懐疑的です。
ドラマでも原作でも、支店長と大橋君は「悪者」で坂本君は「良い人」として描かれていますね。

坂本君はこのままでは「こはぜ屋」はいずれ倒産の憂き目にあってしまう。こはぜ屋が成長を続けるためには何かしないといけないと考えている。企業の成長のお手伝いをするのが銀行の役目ではないかと考えています。

しかし、元銀行員の私から見ると、支店長と大橋君の判断が普通でまとも。坂本君は、気持ちはわかりますが、銀行員としてはちょっとのめり込みすぎかなという印象です。こりゃ担当を外されても仕方がないな、と思います。

銀行のビジネスモデルから考えたらそうなります。
銀行は、皆から集めた預金を原資として、企業への融資や個人へのローンなどで運用し、その利ざやが収益です。預金は元本保証ですから、運用に失敗すること、つまり融資した企業が倒産したりして、貸倒れになることは絶対に避けなければなりません。
ですから、リスクの高い資金需要に対して銀行が厳しい対応になるのは当たり前です。

つまり、埼玉中央銀行の支店長と大橋君は、「こはぜ屋」の新規事業はリスクが高い、銀行が出すべき資金ではない、と考えているのです。

 
■企業の成長戦略とは?

企業には成長が必要です。
経済学者であるアンゾフが示した「成長マトリックス」で成長の方向性についてみてみましょう。

アンゾフによると、企業の成長戦略には4つの方向性があります。
「市場」と「製品」の二軸でそれぞれ「新規」と「既存」に分けて、4つの象限に分類しました。
縦軸が「市場」、横軸が「製品」です。

既存製品 新製品
既存市場 ①市場浸透 ②新商品開発
新規市場 ③市場開拓 ④多角化

 
①市場浸透戦略
まず①の象限。既存市場において既存製品で成長を目指す戦略です。
プロモーションやディスカウント(値引き)キャンペーンなどで競合他社に勝って、一般顧客をロイヤルカスマーに変えてシェアの拡大を目指す戦略です。最もリスクの少ない戦略ですが、数多の競合との闘いで経営資源の小さな会社が勝つのはなかなか難しいのが現実です。

②新製品開発戦略
次に②の象限。今の顧客に新しい製品を提案することで成長を図る戦略です。
自社製品に新たな機能を加えたり、デザインを変えてみたり、関連するアクセサリー商品を開発したりします。お菓子とかビール、清涼飲料水などの企業では常にこの新製品開発戦略を行っています。新製品ではありますが、すでに自社のことをよく知ってくれている既存のお客様に買ってもらうのでリスクはそれほど大きくはありません。

③新市場開拓戦略
ここは今の製品を新しい顧客層へ広げることで成長を図る戦略です。
女性用化粧品を男性用化粧品として展開したり、海外へ展開したりすることがこの戦略です。開拓したいターゲット層に向けて、製品名やパッケージを変えて新ブランドとして導入を図ることもあります。

④多角化戦略
④の象限は、製品・市場ともに、現在の事業とは関連しない、新しい分野へと進出して成長を図る戦略です。これが、最もリスクの高い戦略になります

「こはぜ屋」が取り組む「陸王」は、この最もリスクの高い④多角化戦略です。
建設現場などで使われる地下足袋の市場からランニングシューズ市場への展開。しかも新商品開発に際して「こはぜ屋」が保有している経営資源は縫製技術だけ。素材加工技術も販路もプロモーションノウハウもありません。これらを全部社長の宮沢の熱意だけで乗り越えていこうとしているのです。

これは厳しいですね。
これは銀行が絶対出せない領域のリスクの高い資金です。そこに突っ込んでいく坂本君は危なくて仕方がない。担当を外されても仕方がないですね。

後任の大橋君は「陸王」の開発にはシビアです。しかし、先々週の放送では、新素材「シルクレイ」を使った耐久性が高く、より軽い地下足袋の新商品「足軽大将」には好意的でした。そして「足軽大将」は大ヒットします。

なぜ、「陸王」はダメで、「足軽大将」にはお金が出せるのかというと、この「足軽大将」が、既存の市場に対する新しい製品、つまり、②新製品開発戦略の領域にあるからです。
これならリスクは少ない。銀行が資金を出すことの出来る戦略です。

そういう意味では、良いものは良い、ダメなものはダメとはっきり言うあの冷徹そうな埼玉中央銀行の大橋君は実は銀行員としては優秀なのではないかと思います。
あんなに熱心に工場に足を運ぶ銀行員はあまりいませんしね。
ある意味、素晴らしいと思います。

 
■多角化戦略は企業の成長には欠かせない視点

しかし、現実には既存市場そのものが間違いなくこの先衰退していく、という業界は少なくありません。そうすると新市場に打って出るしかないわけですが、足袋のように新しい市場もないとなると新製品を開発して、新市場を開拓するしかないということになります。

事実、トヨタとかホンダとかソニーとか、今大企業と言われるような会社もそのようにして発展してきました。トヨタは元々は、はた織り機のメーカーですからね。

多角化戦略は企業の成長には欠かせない視点です。多くの企業では多角化の際には、リスクを少しでも軽減するためにM&Aとか業務提携とかを活用しています。

また世の中のベンチャーと言われる企業は、会社経営そのものが④象限にあります。とっかかりもなにもない新しい市場に革新的な新しい商品やサービスを提供しようとしていますから。

こういうベンチャーに銀行は融資しません。銀行は過去の実績を基にしたリスクの低い資金しか出せませんからね。こういう領域の資金は、事業の将来性を理解してくれるスポンサーとか、積極的にリスクを取るベンチャーキャピタルとかから出してもらう筋のものですね。

そういう無理筋を熱意で通そうとするところもドラマ「陸王」の面白いところでもあります。来週も楽しみですね。

今回は以上です。
次回もお楽しみに。

 
【編集後記】 「振り返りと展望」
 
早いものでもう今年もあと1か月ですね。年々早くなっていく時の流れに溺れてしまわないようにしっかりと振り返りをして、来年の展望を持ちたいものです。私の12月のスケジュールはすでに予定が埋まりました(主に夜ですが)。1月の新年会の展望も開けてきたところです。こりゃ来年も変わらないですね・・・。