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ハッピーリッチコラム バックナンバー

第271号『世界中の上場企業の「カネ余り」は意味することとはなにか?』
    ~市場での勝負はついた、そして次の投資先は…?~
2017/07/04

私的年金をつくろう 『ハッピーリッチ・アカデミー』第271号

こんにちは!
明るく前向きに自分の財産を築いていこうと頑張るみなさんに、
ハッピーな人生を送るための情報を提供する「ハッピーリッチ・アカデミー」管理人の川瀬です。

 
■世界中の上場企業が「カネ余り」

世界的規模でカネ余りになっているようです。
今、世界の経済はいったいどうなっているのでしょう?

<企業の現預金、世界で膨張 10年で8割増 1350兆円、有望な投資先なく>
(2017年7月2日付 日本経済新聞)
『世界の上場企業の手元に膨大なキャッシュが積み上がっている。
総額で12兆ドル(1350兆円)に達し、有利子負債を超える手元資金を抱える「実質無借金」の企業は半数を超えた。
リーマン・ショックなどの荒波に翻弄されながらも、IT(情報技術)分野を中心とした技術革新をテコに企業は利益を稼ぎ続けてきた。』

前回、日本の企業の手元現金が積み上がっている、という話を紹介しましたが、実は世界的にもそうなっているのです。

記事によると、上場企業の手元現金の額は、日本では1兆9,000億ドル、アメリカは2兆8,000億ドル、欧州が2兆1,000億ドル、中国が1兆7千億ドル。
世界全体でみると、総額12兆ドル。
この10年で8割も増え、53%の企業が実質無借金経営になったとのことです。

この状況を記事では、『余剰資金をひたすら積み上げる経営姿勢は日本企業の専売特許だったが、ここにきて世界企業の「日本化」が進んでいる』としました。

 
■プロダクト・ライフサイクルとキャッシュの関係は?

世界企業が「日本化」したのはなぜなのでしょう?
世界的に急に堅実経営が主流になったのでしょうか?

「お金が残る」と聞いて頭に浮かんだのは、「プロダクト・ライフサイクル」の話でした。

「プロダクト・ライフサイクル」とは、事業や製品が誕生して市場に導入してから衰退するまでのプロセスのこと。
どのような事業も製品も次のようなプロセスをたどります。

「導入期」→「成長期」→「成熟期」→「衰退期」。

時間軸は様々で、企業で言うと一般的に「30年寿命説」というのがありますが、競争が激しいIT業界や技術革新のスピードが速い分野では数年で成長期から衰退期になるものもあります。
経営戦略上は、自社の事業や製品がどのフェーズにあるかを正しく認識して、それに応じた手を打つことが重要だとされています。

それぞれのフェーズについて説明します。(以下、製品で説明しますが事業でも同じです)

・「導入期」
新製品が市場に導入されたばかりのフェーズです。大量生産が出来ないので価格は高めです。
市場ではその特性や効用が認知されていないのであまり売れません。
そのため製品の改良を続けながらプロモーションを積極的にかけ続ける必要があります。
キャッシュは出ていく一方の状態です。

・「成長期」
市場がその製品の効用を認識し始めて、多くの人が買い始めるフェーズです。
この時期には競合他社もどんどん参入してきて市場の成長を促進します。
このフェーズの基本戦略はシェアの拡大です。
増産のために設備投資をしたり、他社に負けないようにプロモーションを行ったりします。
ですので、売上は上がっても利益はあまり残りません。キャッシュが最も必要になる時期です。

・「成熟期」
製品が市場全体にいきわたり、成長が鈍化するフェーズです。
この時に市場シェアを獲得できていれば、売上が確保できます。
競合との優勝劣敗も明らかになっているので、プロモーションの費用や生産設備の増設などへの支出は不要です。
このフェーズで利益は最大になり、これまで投資したキャッシュが回収されます。

この成熟期に、高い市場シェアを確保したことで大きなキャッシュを生んでいる製品や事業のことを、ボストン・コンサルティンググループは「金のなる木(Cash cow)」と名付けました。

企業戦略においては、この「金のなる木」が衰退期に入る前に、この製品や事業で得られたキャッシュを次の新製品・新事業に投資をしていくことが重要だとされています。

 
■キャッシュが増えた=勝負がつき、次の投資先は、ない

世界の上場企業がキャッシュを積み上げているということは、今は世界全体で経済が成熟期にあるということなのかもしれません。
その上で、様々な世界の、様々の事業分野において二つのことが起きているのではないかと思います。

ひとつは、「勝負がついた」。
経済全体が成熟期にあるとすると、様々な業界で競争が一段落して勝ち組が決まったということだと思います。
例えば、インターネットポータルは、成長期にある間は、急増するアクセスに対応するために投資が大きくなりますし、新サービスを獲得するためのM&A資金なども多くかかります。
ここで投資を躊躇していたりすると、競合に負けてしまいます。
IT業界は独り勝ちの世界です。トップがすべてをとる寡占の業界です。
先日、米ヤフーが事実上解体したというニュースはまさにこの例にあたります。
インターネットポータルの世界ではグーグルが独り勝ちしたということです。

ずっと赤字が続いても投資を止めなかったアマゾン、独創的な新製品を開発し続けたアップル。
どの企業も勝負している間は投資をし続けたわけですが、勝負がついた今、莫大なキャッシュが入ってきているわけですね。

もうひとつは、「次の有望な投資先がまだない。」
経営戦略上は、成熟期で得たキャッシュを次の新事業・新製品に投資する、というのがセオリーです。
しかし、世界の上場企業内にキャッシュが積み上がってしまっているということは、次に成長が期待できる有望な新事業や新製品がまだないということなのでしょう。

世界経済そのものが成熟期に入ってしまっているということです。
次への投資分野がないとすると、その次にやってくるのは…、「衰退期」になってしまうかもしれません。

 
■企業は投資を、政府は所得の再分配を

この記事のもうひとつのポイントは、手元現金を積み上げているのは世界の「上場企業」であるということです。
様々な市場の勝者だから上場企業なのでしょう。
特にIT分野のような独り勝ちの世界では、その他大勢の企業やそこで働く従業員(もしくは失業してしまった人も・・・)は成熟期を迎える前に競争に負けて衰退期を迎えたのかもしれません。

つまり、企業も個人も二極化しているのです。
一握りの勝者だけが多額のキャッシュを手にしています。
アメリカではその二極化の割合について、「1%vs99%の闘い」などと言われていましたね。

今、企業や個人の余剰資金を吸い上げているのは政府です。
リーマン・ショック後に世界各国の政府は財政支出を拡大しました。
日米中の政府債務は合計36兆ドルと10年前から9割も増えたそうです。

溢れる余剰資金が膨張する政府債務を支えている構図ですね。
そして政府は二極化している中間以下の層に再分配をしています。
財政支出によって事実上の企業救済や貧困層への福祉にお金を回しています。
こうして再分配された資金によって経済全体が底上げされていかないと、いずれ「増税」ということになります。

政府が国民経済を下支え出来ているうちに、先進企業が長期的視点の下で事業投資をして、経済全体が底上げされていくような好循環をつくることが大事ということですね。

世界経済が衰退期に入ってしまう前に。

今回は以上です。
次回もお楽しみに。

 
【編集後記】 「藤井四段、成長期」
日曜の夜に、公式戦30連勝に挑んでいた将棋の藤井聡太四段が負けてしまいました。
それでもデビューから29連勝はすごい!(ことらしい)ですね。
実は将棋の世界はまったく知らなったのですが、藤井四段のお陰で色々知ることが出来ました。
いつでも時代はスターを求め、スターがその分野を切り拓く、ですね。まだ14歳ですよ。成長期です。